初めて貴方をめちゃくちゃにしたくなった時のことを、やけによく憶えてるんです。 ――やぁだ、なんて顔してるんです。青ざめるより赤くなるとこでしょうそこは。 髪型が崩れてたんですよね。こーんな、ぴしって固められてるココがね、こう、おりて、痛ッ! いいじゃないですかちょっとくらい――で、なんか少し若く――ん、見た目は十分若いほうですから妙な言い方ですね――普段よりね、幼く見えたんです。前髪が、あると。それがまあ、率直に言えば可愛くって、あ、照れてます? あっはは、案外誉められるの苦手ですよねぇ。 そのときの感じが忘れられないんですよ。身体のあちこちが、燃え上がりそうな――血潮が滾る、ってあんなですかね。あぁ、闘う時とはまた違う意味で。加えてびっくりするほど無防備にうとうとしてたから。ご自由にお召し上がり下さいと言わんばかりで、あんなの、ねえ――ちょっと真面目な話ですよ、もう。ほら目を逸らさない。僕の気を知った上であの仕打ちでしょう、本当――わるいひとなんだから。あんなことされたって文句言える立場じゃありま痛いです痛いですったら。 ともかくそれが予想外というか、ね。ギャップ萌えとは斯様なものかと全身で納得しましたよ――え、何です? ううん、可燃不燃じゃなくて――萌葱とか萌芽とかの萌え、です。くさかんむりの。はい? ――どゆこと、と言われましても。理性的に説明し難い、まさにえも言われぬ想いであればこそ、その概念をシンプルな形で最大限表現・伝達する為に人々は新しいことばを創るもしくは副次的な意義を見出して行くんだと思うんですまあそう言い切って解説を放棄してしまうことは怠惰ではあるんですが、って聞いてませんね。――そう、ですねぇ。たとえば貴方は僕のどんな所が「いい」って感じます? 仕種とか、表情とか――はは、また照れちゃいましたか。 ――ん、何ですか? あぁ、髪を上げてちゃダメなのかって? そこはほら、こうして。試しに一口いただいてみなきゃ分からないでしょう? 2013-05-18 |